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第3回「想定の範囲内です。か?」
「想定内(外)」
皆さまは 覚えていらっしゃいますか?
平成17年に当時のライブドア社長、堀江貴文氏が受賞した流行語大賞の言葉です。
最近では災害が起こるたびによく耳にします。
災害時においてできるだけ減らそうと努力はするものの、どうしても生じてしまう想定外。
今回は私の身近で起こった想定外の面白い例をご紹介します。
先日、10年ぶりに海外旅行へ行ってきました。飛行機に乗ると客室乗務員(以下、 乗務員)は全員、外国人。日本語はまったく通じません。
搭乗して最初にペットボトルの水が配られました。
少しずつ水を飲み、残り3分の1ほどになったペットボトルを座席前ポケットに入れていました。
そのペットボトルを見た乗務員の方が話しかけてきて何やら私に言っています。(残念ながら、私は全く英語ができません…。)
最初は水がこぼれる危険性があるから、キャップをきちんと閉めるように言っているのだと思いキャップを確認しましたが、特に問題はありません。
今度はジェスチャーでペットボトルのふたを開けるように言ってきました。状況をよく理解できないままふたを開けたところ、乗務員の方はペットボトルを持ち上げ、自分が手に持っていたポットから水を注ぎ始めました。しかも、通路に水を派手にこぼしながらです。
乗務員の方はとてもにこやかに水を注ぎ入れてくれ、私に満タンになったペットボトルを返してくれました。
私は感謝を込めて数少ない英語のボキャブラリーを駆使し、「Thank you」と返しました。
一般的に日本人の感覚では、空になったペットボトルに気付いた乗務員は、新しいペットボトルか、コップに入れた水を持ってきてくれる、と期待するのではないでしょうか。
もし日本の航空会社で同じようなサービスをしたら、乗客は失礼だと怒り出すことすらあるかもしれません。
これはまさに私にとっての「想定外」。ただし、一度経験をしたので、これからはもう驚かないでしょうし、水に濡れて困る物はとっさに退避させます。
ここで私はちょうど1年前の西日本の広域で発生した平成30年7月豪雨を思い出しました。被災地ではまさに想定外の大雨。私の地元は広島なので、親や知人から当時の様子や苦労話を沢山聞きました。
皆さまは大雨対策といえば何を想定されていますか?
自宅であれば避難所への避難、企業であれば事務所などの浸水対策や停電対策などが主なものとして挙げられるでしょうか。
新聞でも取り上げられましたが、製造業の某企業では大雨による工場の被害はほとんどありませんでした。
しかし、電車を始めとする交通網がほとんど機能しなくなったため、数日間にわたって多くの従業員が出社できませんでした。結果、操業停止を余儀なくされ、数百億円の損害が発生したということです。
この企業もさまざまな 災害対策をとっていたと思われますが、大雨による交通網の麻痺で従業員が集まらず操業が不可能になるということを事前に想定するのは難しかったのでしょう。
しかし、今回の経験をもとにまた同じような災害が起これば、直接被害がなかったとしても、数日間、企業活動に必要な従業員の確保ができなくなるという状況を想定しなければならないとの教訓は得られました。
想定外はゼロにはできません。しかし、少なくとも過去の経験から学ぶことで、想定外を減らすことはできます。
また事前に策定したマニュアルに沿って行動することも重要ですが、有事の際は想定外の連続です。刻々と変わる状況に応じて適切に判断することも重要です。
日頃から「想定外を減らすこと」と「想定外にとっさに対応できる力を養っておくこと」、この2つを意識して防災に取り組みたいものです。
プロフィール:
コンサルタント 藤田幸憲 (一級建築士)
BCPコンサルティングや各地域での防災勉強会の講師などを担当しています。
建築の専門性を活かし、再開発事業等の街づくりにおける防災のコンサルティングも行っています。
先日、10年ぶりに海外旅行しました。
海外に行くことで改めて自分は日本人なんだなと気づかされ、
来日する外国人にやさしい街づくりの重要性を改めて実感しました。
広島出身なので、カープの戦況に一喜一憂する日々です。