Column
ゴーグルはつけません
「それって市場規模はどうなの?」
「業界予測はどうなの?」
「どうやって儲けるの?」
若手社員を対象とした、新規ビジネス検討研修でのことです。
若手社員の新規ビジネス検討結果の発表に対して、先輩社員からのコメントです。
とにかく
「出来ていないこと」にだけ指摘が入ります。
すると段々、受講生同士でも
「それってロジックが飛躍してない?」
といったようなコメントを言い始めます。
イノベーティブな雰囲気は、まったくありません。
最近研修を行っていて、特に感じることがあります。
それは、
「問題や原因を追究する思考が強すぎてしまうために、
出来ていないことに焦点が当たり過ぎてしまい
先に進めなくなってしまう現象」
です。
イタリアの化学工場で実際にあった話です。
その工場では安全対策の為、ゴーグルを着用しなければならなかったのですが、
ほとんどの従業員が着用しないという問題がありました。
さまざまな分析の結果、原因は
「従業員の教育レベルだろう」
「従業員が経営者に反抗的だからだろう」
「管理者のコミュニケーション能力が低いからだろう」
というものでした。
分析結果に基づき、早速対策を行います。
しかし、皆ゴーグルをまったく着用しないのです。
そこであるコンサルタントが呼ばれました。
彼が対策会議で皆に放った「問い」は次のようなものでした。
「で、どうすれば皆ゴーグルを着用するようになるんでしょうか?」
すると一人の出席者が言いました。
「おしゃれなゴーグルだと、皆着けるんじゃない?」
ミラーになった
サングラス風デザインのゴーグルにしたところ、
全員喜んで着用するようになりました。
『ソリューションフォーカス』
問題の原因よりも、如何にすれば解決できるかに焦点をあてたアプローチです。
「何故出来ないのか」を問うのではなく
「どうすれば出来るようになるのか」を問うのです。
原因追究が行き過ぎると、出来ないことに焦点が当たりすぎます。
クロネコヤマトの創業者である小倉昌男氏が
宅急便の計画を経営会議にかけた時、一人の役員を除いて
全員が反対したそうです。
宅配便ビジネスを始めるかどうかについて、当時の分析結果は
ネガティブなものばかりでした。
出来ない理由がたくさん並んでいたのです。
しかし小倉昌男氏は宅配便ビジネスを開始し、どうすればこの新ビジネスが
軌道に乗るかを考え続けました。
そして5年後に、見事黒字化させることに成功したのです。
行き過ぎた原因追究は、発展性がないことを知っておくべきです。
これまでとは違う仕事の進め方を行い、多様性を認め、
イノベーティブに成果を生み出していくためには
『ソリューションフォーカス』が欠かせないと思います。
「働き方改革」の本質もここにあるのかもしれません。
人材育成・開発においても同じです。
出来ていないことを取り上げるだけで、人が育つはずがありません。
どうすれば出来るようになるのか。
指導的立場の方々は、それを必ず問うていただきたいと思います。
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