Column
多様化する価値観 企業がワークライフバランスを実現するためのポイントとは?
ワークライフバランスという言葉の発祥は、1980年代の米国といわれており、日本でも実現に向けて取り組みが続いています。しかし、現代社会では価値観が多様化してきているため、従来型の画一的な対応では難しいことも多々あるのです。こうした多様化する価値観を持つ現代社会において、企業がワークライフバランスを実現するためのポイントとは何でしょう?
ワークライフバランスとは?
ワークライフバランスとは何でしょうか。
内閣府が定める「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」によれば、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」とのことです。
(引用元:内閣府「仕事と生活の調和の実現に向けて」)
現代では、価値観や働き方の多様化など社会背景が変化してきているため、画一的な就業規則では、一人ひとりの事情に合致しない場合も増えてきています。目指すのは、一人ひとりに合ったワークライフバランスを実現すること。そのため今、政府主導で、ワークライフバランスの実現に向けて模索や対応を講じる方向に駒を進めているのです。
海外事例で見る企業規模の拡大とジレンマの解決策
シリコンバレーのIT大手、例えばGoogleやFacebookなどは、ニューヨークにも大きな拠点を開設し、企業規模を拡大しています。しかし、それによりジレンマが発生しているのです。まず、ニューヨークオフィスに勤務するGoogle従業員の声を聞いてみましょう。
「西海岸には楽しみが少ないです。Tシャツ1枚で年中過ごせますしカジュアルな街だからドレスも不要。でもニューヨークでなら毎日ファッションを楽しむこともできますし美味しいレストランも多いです。当面はこの街に住みたいですね」
IT大手は給与面も含めて待遇が非常に良いため、若くして富裕層となった従業員たちはニューヨークのような都市部での生活を望みます。しかし一方で、既に成功した企業の経営陣は、自然環境が豊かな地域での落ち着いた生活を望むという傾向にあるのです。
このように、同じ企業の中でも求めるものが違います。またこれらを叶えるには、コストもかかりますし、効率の低下も見込まれるため、企業にとって大きなジレンマとなるでしょう。
しかし、ニューヨークに拠点を開設したことで、従業員のワークライフバランスを実現する手伝いをしたことは事実です。決して、一気にジレンマのすべてを解決できたわけではありませんが、ひとつの取り組み事例としてとらえることができるでしょう。
「多様な価値観」 企業はいかに対応すべきか
日本国内に限定しても、多様な価値観による生活環境への要求は多岐にわたります。個々の環境には、独身か既婚か、扶養家族や介護の有無、都市部か地方かといった居住地、趣味など多くの事柄が含まれるでしょう。また、環境は常に変化するため、「政府や企業が一方的に定めたワークライフバランス」を提供するだけでは限界が発生しつつあります。
こうした多様な価値観に対し、企業はどのように対応したのか事例を見てみましょう。
キユーピー株式会社の事例
同社はまず「ワークライフバランスについて考えるきっかけ」を与えるため、社員にアンケートを実施しました。その理由は、社員がワークライフバランスを「やらされている」のではなく、「自分のこととして考える」ようにするためです。
その後社員は、「自分のワークライフバランスとは何か」を具体的にイメージし、内容を職場内でシェアします。シェアの場では、上司や部下といった立場の壁はありません。お互いがお互いを素直に理解していきます。こうした試みでお互いのワークライフバランスを支え合えるようにしたのです。
JXTGエネルギー株式会社の事例
同社では、「いきいきとした働き方」という考えをベースに、ワークとライフが両立できるよう進めました。具体的な改革としては、「ACTION8」というプランが挙げられます。
このプランでは社員と管理職の双方に働きかけを行い、社員は早く帰るように意識を改革、管理職は時間外労働や業務命令の適切な指示ができるようにマネジメント面を改革したのです。
このように各企業で少しずつ、ワークライフバランスの実現に向けた取り組みが増えています。多くの人がワークライフバランスを実現できるような社会が、これから少しずつ出来上がっていくことでしょう。
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