コラム

オンボーディングとは?目的や企業の成功事例を紹介します

1.オンボーディングとは何か

オンボーディングとは、入社した社員を早期に活躍できるようにすることや、離職防止の取り組み全般を指す言葉です。
もともと、飛行機や船に乗り込む搭乗員や乗客を意味するところが語源になっています。
例えば、船を企業に見立てた入社イメージでは、釜山港では田中さんが入船し、シンガポール港では佐藤さんが入船し、大洗港では鈴木さんが入船する様子が入社イメージとなります。
企業がさまざまな事業を展開するうえで、さまざまなスキルや能力を持った社員に早期に活躍していくための取り組み全般がオンボーディングといえます。

2.オンボーディングがなぜ必要なのか

オンボーディングが必要な理由は、入社してまもない中途入社の社員や新入社員が早く成果を出すことで組織全体の生産性に向上させようとする経営視点の取り組みだからです。

例えば、先例のように企業体を船に見立てた場合、タンカーに長年乗務していた佐藤さんが、大型客船に転職したとします。大型船に乗務しているという点では同じかもしれませんが、船の操舵方法や燃料の供給方法、非常時の乗員の誘導の仕方など異なる点は多いと思います。
同じ職種だったとしても、企業ごとに求められる仕事の仕方も異なります。
このように人事部だけではなく企業全体を船に見立てて、全社的なオンボーディングの取り組みが必要なのです。

オンボーディングはこれまでの知識や経験、スキルがある中途入社の社員の方がオンボーディングは大切になります。
なぜなら、新入社員は事前の予備知識が少ないため、その企業のやり方をしっかりと習得していけば良いので、オンボーディングではなく新入社員研修や職場でのOJTが効果的です。

それでは、なぜオンボーディングが注目されているのでしょうか。
注目されている背景として、大きく3つの背景があるのではないでしょうか。

①有効求人倍率の上昇
②生産年齢人口の減少
③労働時間の減少

①有効求人倍率の上昇
②生産年齢人口の減少
③労働時間の減少

企業がせっかく多大な労力をかけ採用しても、採用後にうまく成果が出せずに退職しては、大きな損失になります。
職務とスキルにアンマッチが起きている方を無理に引き止めるということではなく、本来成果を発揮できたはずの方を活かしきれずに退職することを避けるために必要な取り組みなのです。そのためには人事部だけではなく、配属される現場の協力が必要不可欠になります。

また、オンボーディングが注目されている理由として、新型コロナウィルスの影響により対面でのコミュニケーションが取りづらく、入社後にOJTがうまく機能しづらい・上司に気軽に話しづらいといった物理的なコミュニケーションの制約が大きく影響を受けていることが背景にあります。

つまり、これまでより手厚いオンボーディングの仕組みが必要になっているのです。

3.オンボーディングでどのようなことが行われているか

それでは、オンボーディングの施策として、どのようなことに取り組まれているのか、一例をご紹介します。

①経営理念の浸透
②交換日報
③入社後研修
④懇親会・ランチ会
⑤メンター制
⑥上司との1on1ミーティング

①経営理念の浸透
②交換日報
③入社後研修
④懇親会・ランチ会
⑤メンター制
⑥上司との1on1ミーティング

一例ですが、施策の狙いとしては、コミュニケーション量の増加を目的にしている例が多いと考えられます。
マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱された「組織の成功循環モデル」にあるように、コミュニケーション量を増やし関係者との関係の質を変え、思考の質・行動の質を変えて結果の質を変えていこうというアプローチだといえます。
加えて、コミュニケーション量が増えることにより、上司はメンバーの状況や特性が理解でき、メンバーの特性に合わせた仕事へアサインできることにより、結果の質が変わることも期待できます。


そして、上司が気をつけるべき点は、コミュニケーションのなかで意図を持つことが大切です。
例えば、経営理念の浸透をただ漫然と伝えるのではなく、経営理念を体現している行動がどのようなものであるか、それがどのような意味を持つのか、伝える上司がしっかりと腹落ちできている状態が必要になります。懇親会やランチ会にしても、どのような部署の人間とどういう関係性を築いてほしい会なのか、これが意図的に行われないと施策が形骸化してしまいます。
そのためには、現場の上司がオンボーディングの目的や背景をしっかりと理解できるように教育することが必要です。

4.どのようなことを目的にしているか

それでは、オンボーディングがなければどのようなことが起きる可能性があるか、検討していきます。入社した側の視点で考えていきます。

①不満・不安が蓄積する
②職場の作法がわからず空回りする
③職場の中で孤立する

①不満・不安が蓄積する
②職場の作法がわからず空回りする
③職場の中で孤立する

中途入社や新入社員で新たに入社された方は、基本的に不安に満ちていると思います。
新しい環境で仕事をすることは極めて大きなストレスがかかります。くわえて入社まもない状況のなか、上司や同僚に本音で話しできる人は非常に少ないと想像され、そのような状況で起きるのは精神的な孤立や空回りが起きます。

中途入社の方に対して、上司や同僚はどの程度の仕事ができるのか評価をしようと、あまり1から10まで教えずにまず仕事をしてもらおうという職場は多いのではないでしょうか。
そうすると、入社した側はこれまでの仕事のやり方で進めようとして、職場の作法がわからずこれまでの経験則で仕事を進めてうまく成果が出せず、より一層上司や同僚に聞きづらい状況を招く恐れがあります。

このように新しく職場に入った方は自ら情報発信がしづらい、という前提に立ってコミュニケーションを設計する必要があります。

5.オンボーディングを阻む弊害

それでは、オンボーディングを施策として、あるいは制度として構築しても、現場でうまく機能しないことがあります。どのような理由が考えられるのでしょうか。
オンボーディングという言葉が広く認知されるようになって、まだ数年です。これまでオンボーディングを受けたことがない上司は、必要性を体感できていない方も多くいます。
そして、上司はオンボーディング施策がなくても成果は出せるだろうという勝手な期待を抱きます。
このように、新たに入社された人の心理的な安全性を確保して働きやすい環境がパフォーマンスとどのように相関するのか、丁寧に理解してもらえるよう説明する必要があります。

加えて、職場内で暗黙知になっている作法や独特な仕事の進め方が言語化できていないために、新しく入社された社員に教えることもできないのが実態です。

6.オンボーディングが成功している企業の事例

オンボーディングの施策は先述しましたが、具体的にどのような話を上司や同僚はすれば良いのでしょうか。

①プライベートの理解
②特性やキャリアビジョンの理解
③心身の健康状態の確認
④仕事の段階(教え始めたとき、慣れ始めたとき)における課題の確認
⑤目標を設定する
⑥目標に対する進捗を確認
⑦目標達成に必要なリソースを確認
⑧行動促進と振り返り
⑨組織に貢献するために何をしていきたいかを確認

①プライベートの理解
②特性やキャリアビジョンの理解
③心身の健康状態の確認
④仕事の段階(教え始めたとき、慣れ始めたとき)における課題の確認
⑤目標を設定する
⑥目標に対する進捗を確認
⑦目標達成に必要なリソースを確認
⑧行動促進と振り返り
⑨組織に貢献するために何をしていきたいかを確認

関係構築の状態を段階的に分け、新たに入社コミュニケーションをとることが図ることが重要です。

7.おわりに

今回は中途社員の早期活躍に有効なオンボーディング施策について取り上げました。
オンボーディング施策の大事なポイントは大切な人的資源を会社全体で大切に取り扱うということではないでしょうか。
人事部だけではなく、現場においても大切に社員を育てていこうという文化を醸成していくために、オンボーディング施策についてこれを機に点検されてみてはいかがでしょう。