コラム

ミレニアル世代の価値観・特徴とその育成法

1.ミレニアル世代の特徴・価値観の整理

ミレニアル世代とは、ミレニアム「millennium」(千年紀)からきています。
ミレニアル世代の前にはジェネレーションX世代、後ろにはジェネレーションZ世代が存在し、ミレニアル世代は別名ジェネレーションY世代とも呼ばれます。

このミレニアル世代はアメリカで生まれた消費動向の世代間の特徴を表した言葉であり、諸説ありますが2014年にワシントンのシンクタンクであるピュー・リサーチ・センターが行った発表によれば、ミレニアル世代とは1981年~1996年に生まれた世代を指します。

この世代の特徴は、インターネット環境の整備が飛躍的に進んだ時代に育ち、デジタルネイティブであることから、わからないことがあればすぐにインターネットで検索をします。Google検索を行う、いわゆる『ググる』です。すぐにインターネット検索により答えを取得できることから、自分で粘り強く考えることに抵抗があるといわれています。

また、TVのようなマスメディア以外にも、ソーシャルメディアなどのSNSを活用しながら個人の情報発信も行います。
インターネットに慣れ親しんできた世代であるため、パソコンやスマートフォンを操作することには苦労を感じることは少なく、さまざまなデジタル機器を使いこなすことが大きな特徴と言えます。
そのため、ミレニアル世代からすると当たり前に感じることもあり、50代以上の社員がパソコンスキルについて馬鹿にされているという感情を持つことも少なくないようです。

さらに、ミレニアル世代の価値観は、社会問題に関する関心が強いことが特徴です。
背景としてミレニアル世代が育った時代は、2001年9月11日にアメリカでおきた同時多発テロ事件、2008年9月15日のリーマン・ショック事件、2011年3月11日の東日本大震災など数多くの事件や社会問題が多く発生した時代になります。
このように大きな社会問題を経験した世代であるため、社会に対して貢献したいという意識が高く、そのために個人の多様な価値観を広く尊重していこうという共感性が高いことが特徴です。

加えて、ミレニアル世代を取り扱ううえで重要なVUCAと呼ばれる言葉があります。
VUCAとは、先が見通しにくい世の中であることを表した言葉であり、Volatility(変動制)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、元々は1990年代に軍事用語として誕生しました。

VUCA前の戦争は、国と国とが戦い、統合参謀本部が作戦を作り、現場の部隊が作戦を忠実に実行するものでした。ビジネスにおいても同様で、トップが戦略を立て、現場が実行するモデルが多く、組織の形態はピラミッド型が主流でした。
しかし、2001年にアメリカの同時多発テロを皮切りに始まった、アメリカとアルカイダとの戦争により状況は一変します。最大の変化は、アルカイダが国ではないことです。一見すると組織のように見えますが、誰がトップかよく分からず、また、トップが作戦を立て、それを現場が実行しているわけでもありません。思想に同調した人たちが、同時多発的にテロを行いました。これまでの国を中心とした戦争とは、スタイルがまったく異なっているのです。そこでVUCAという言葉が生まれ、その時々に応じた戦い方が必要だとする考え方であり、ビジネスにもVUCAという考えが広く普及するようになりました。

それでは、ミレニアル世代の前にはどのような世代の価値観が存在していたのでしょうか。
ミレニアル世代の前は1965年から1980年までのジェネレーションXと呼ばれる世代がおり、この世代の特徴は、仕事において安定を求める傾向が強く、仕事で成功するために、自分の時間を仕事に多く割くことが傾向にあります。

一方、ミレニアル世代は仕事とプライベートを分け、自分なりにしっかりと保ちながらワークライフバランスを両立することを理想としています。また、リーマンショックを見て育った世代であるため、一つの会社で専門的な経験だけを積むことに危機感を持っています。そのため、転職や独立に対する抵抗が少ないことも価値観と言えます。

消費に関しては、様々な社会問題を目の当たりにしてきた世代であるため、モノはいつかなくなるかもしれないという経験から、モノに対する執着が薄く、製品やサービスによって得られる体験や経験を重視する傾向があり、モノ消費からコト消費と呼ばれるようになりました。
そして、月額固定額を支払うことによってサービスが受け放題になるサブスクリプションモデルや所有しないシェアサービスという新たなビジネスモデルが生まれた世代でもあります。

それでは、ミレニアル世代は企業の中でどのような役割を担っているのか確認していきましょう。
1981年~1996年生まれがミレニアル世代と定義すると、2022年時点の年齢は26歳~41歳までの年齢になります。26歳~41歳ということは、管理職前の社員の方が多いのではないでしょうか。

今まで述べてきたミレニアル世代についてまとめると、社会貢献への意識が高く、多様な価値観の受容性が高い26歳~41歳の世代であり、企業の実務中核を担っている世代と言えます。

2.ミレニアル世代への指導方法

ミレニアル世代が多様な価値観の受容性が高いということは画一的な指導を嫌い、被指導者の状態を見極めて指導することが求められます。

一方、指導するジェネレーションX世代の方々は画一的な指導が主流であったため、相手に合わせた指導をすることに不慣れで困惑される事象が見受けられます。

それでは、どのような指導を心がければ良いのでしょうか。以下、3つのポイントに沿って解説します。

  • ① 必要な能力やスキル、経験を可視化する
  • ② 必要な教育手法を選定する
  • ③ 教育手法の効果検証を行う

①必要な能力やスキル、経験を可視化する


まずは、企業において必要な能力やスキル、経験などを棚卸しすることを推奨します。
それは、指導者が何を基準に指導すべきかを明らかにすることで、指導の観点を統一することが可能になります。
例えば、企業内で粘り強く考え抜く「思考力」、お客様と自社の利益を最大化させるための「交渉力」、新たな事業や従来の枠にとらわれない「創造力」など、企業が置かれた状況や事業特性において必要な能力やスキルは異なりますので、まずはその棚卸しすることから始めてみてはいかがでしょうか。

次にその評価項目を指導者(他者評価)と被指導者(自己評価)がお互いに評価をし、違いを明らかにしていくことで認識のズレが明らかになります。この作業により、被指導者は自分がどのように指導者から見られているのかを知ることが可能になります。ズレが明らかになるということは、指導者の期待を被指導者が理解することに繋がります。

たとえば、被指導者は粘り強く考え抜く「思考力」を発揮できていると思っているものの、指導者からすると、これまでの過去の議事録や成果事例から引用しているだけで、自分自身で考えているようは見らえないというズレがあるとします。そこを擦り合わせることにより、被指導者は「思考力」というのは自分自身で考えることが求められているのだ、ということに気付くことができます。

②必要な教育手法を選定する

必要な能力やスキル、経験が明らかになれば、それをどのように身につけていくかを検討します。
仕事で能力開発を行うOJT(on the job training)と、仕事以外のOff-JT(off the job training)に分けて、教育手法を選定します。 Off-JTとは仕事の場所を離れて、研修やオンライン講義で能力開発を行う手法を指します。

この際に注意すべき点は、能力やスキルが最も身に付く手法を選定することです。
何がなんでも研修かオンライン講義か白か黒かを分けて実施しようとすると、必要な能力が身に付きません。知識のインプットは自由度の高いオンライン講義で行い、対人コミュニケーションが必要な要素は集合型の研修で行い、事後の効果検証はビデオ録画型で人事部に提出するなど、最適な手法は何か考えて設計することが重要です。

③教育手法の効果検証を行う

最後に、必要な教育手法が選定され実行した場合には効果検証を行う必要があります。効果検証をするうえで大事な観点は、必要な能力やスキルが身についているか、という点です。

例えば、知識であれば事後に知識テストを行えば良いですし、スキルであれば実際に現場で行動が発揮されているかどうかを確認することで、効果検証を行うことができます。
もし、効果検証の結果、教育手法に違和感がある場合には、必要に応じて教育手法を見直されることをお勧めします。

3.多様性の理解

先ほどVUCAと呼ばれる時代背景について触れましたが、ビジネスにおける答えは一つではありません。そのため偏った意見だけではなく、多様な価値観から多様なニーズがあることを理解することが大切です。

職場におきかえると管理職だけが強い意見を通すのではなく、現場の一般社員からも意見を引き出していくことにより、自分にはない意見が取り入れられ、新たなビジネスチャンスが生まれます。ミレニアル世代を含め様々な世代・立場の違いを受けとめ、意見や考えを聞くこと、その中で取捨選択や活用することが重要といえるでしょう。

4.まとめ

今回は、ミレニアル世代の価値観から、指導のポイントについて触れてきました。
ミレニアル世代の次の世代はZ世代と呼ばれ、さらに価値観が異なります。数十年後には彼らが消費者の主流となり企業の中核人材になることは間違いありません。
多様な価値観を受容する文化が形成できると、自由闊達な議論が生まれるようになり、それにより、新しいアイデアが生まれます。新しいアイデアが生まれるということは、これまでにないビジネスが生まれることにつながり、結果として、企業体質の改善が見込めます。
これを機会に職場でどのような指導や育成が行われているか、今一度、点検・見直しされてみてはいかがでしょうか。