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2022/01/21

Withコロナ時代における人材育成上の課題について

1.はじめに

オミクロン株が広まりつつある現在、コロナウイルスと共存する時代が既に始まっています。ニューノーマルは新しい「ノーマル」であって、コロナ禍で進んだ現実は戻ることなく、新しい日常として定着していくことになるでしょう。

コロナ禍は人材育成の文脈ではどのような影響を与えたのでしょうか。コロナ禍という外部環境の変化に対して日本企業はどのような対応をしていくべきなのか、今回は「Withコロナ時代における人材育成」について、大きく3つの視点から指摘をしていきます。1つ目は個人のスキルアップがより重要になること、2つ目は組織に属するというアイデンティティ教育が求められるということ、3つ目は広く社外にネットワークを作る活動のサポートをすることです。

多くの方が感じられるように、コロナ禍を通じて働き方や社会のあり方は大きく変わりました。その中でどのように勝ち残っていく企業になるのか、考えていきましょう。

2.価値創造の源泉は個人に ~個人のスキル向上への投資を
(1)まずは、とにかくデジタルスキルの獲得

コロナ禍になって目に見える最大の変化はテレワークの浸透でしょう。オフィスの稼働率が下がったということで事務所を返却してしまった企業も多いのではないでしょうか。

この世界ではとにかく、コミュニケーションをとるために最低限のデジタルスキルが必要になります。ZoomやTeamsを使ってやり取りできる、ファイルの授受を問題なくできる、セキュリティやネットワークについての一定の理解がある、などの知識がなければ仕事自体ができなくなるでしょう。営業でも、今までは足を動かして案件獲得を行っていた人が、必ずしもデジタルな営業も得意とは限りません。デジタルに合わせた社内ノウハウのアップデートが必要になりますので、このタイミングで必要スキルを棚卸しするとよいでしょう。

(2)結果主義に伴う個人のスキルアップ支援

次に、テレワークの導入に伴って多くの会社ではジョブ型の雇用形態へとシフトし始めています。これは職務要件を決め、期待される成果を明確化することを目的としていますが、要するに今まではプロセスの評価であったものが、結果の評価に比重が置かれていくということです。結果を出すことにつながれば、そこに至る工夫についての裁量は大きくなるはずで、その点で個人個人のスキルアップが欠かせなくなります。組織全体に働き掛けて一律に強くするというよりも、強い個人が組織を牽引し、個人の集合体である組織の強化に繋がる、という世界に変わっていくため、いかにそのスキルアップを支援できるのかも大変重要なポイントになるでしょう。

コロナ禍が教えてくれたことは、何が起こるか分からないということであり、業界環境が激変する可能性もあるということです。そういった流動的な状況において、どう先を読み、どのように対応するか、各人の状況判断力や変化への対応力が問われていきます。その意味でも、自分で考え、行動できる、提案できる力をいかに養っていくかが今後の人材育成上の主要なテーマになることは間違いありません。

テレワークが進み、結果主義になっていけば、当然個々人が出すパフォーマンスが価値の源泉になっていきます。そのことを企業側も、社員側も理解する必要があるでしょう。

3.アイデンティティはどこへ ~組織に属する理由

そのようにテレワークのなかで個人としての働き方が強くなっていくと、組織で働いている意味合いが薄くなっていくことを感じるでしょう。今までの日本企業は家族的な組織運営だったわけで、「彼(彼女)のことは良く知っている」「長い間一緒に働いていた」「彼(彼女)とは同期なんだ」といったことがメンバー同士の紐帯となっていました。しかしデジタル化、個人化が進む中でそういったハイコンテクストな世界は薄まり、どうしても業務はローコンテクストにならざるをえません。そうなると組織に属していても、業務委託で外注として働くのも大して変わらないと思うようになってしまいます。

ここで重要なことは、「組織としてのアイデンティティ」をいかに確保するのかということです。これは過ごす時間の大きさとは必ずしも一致しません。大企業で働いていても特に愛着を感じていない人もいれば、ベンチャー企業に一部参加しているだけでも大きなやりがいを感じる方もおられるでしょう。結局は、その組織の大きな目的をどれだけ共有し、どこまで共感しているかということにかかってきます。

コロナ禍で組織の物理的な繋がりが切れてしまい、業務のデジタル化、細分化、ローコンテクスト化が進む中、従来の方法では組織への帰属心は育っていきません。ここで必要なことは、より高い次元での繋がりであり、よりハイコンテクストなビジョンの共有、存在意義の共有、社会への貢献方法の共有になっていくでしょう。

  • なぜこの会社は存在するのか、どう社会に貢献しているのか
  • 今までどのような歴史を辿ってきて、どう社会を変えてきたのか
  • 顧客は自社を使うことでどのように感動し、幸せになっているのか
  • 社員一人一人はその価値創造に対して、どのような役割を担っているのか

こうした問いかけは従来の日本企業ではあまり問われてきませんでしたが、社員がこれからの社会で組織の一員としてアイデンティティを持ち、個々人なりの工夫をして価値を出していくためにどうしても必要なことになるでしょう。これがなければ組織で働くことの意義が徐々に薄れていき、個人と組織が双方の成長に貢献しあう関係が失われてしまいます。

組織の理念、ビジョン、歴史、社会的役割を踏まえメンバーが共感と継承の意思をもつこと、それがWithコロナにおける組織の必要条件であり、そういったマインドを持ってもらうことが人材育成の大きな課題となるでしょう。例えばネスレという会社は多くのM&Aを行っていますが、買収した会社の社員には徹底的な理念教育を施します。企業の持つ哲学を注入することで、それぞれの社員が創意工夫を果たしながらもネスレ流の規範からは外れず、ネスレらしさを体現できるという意味で、欧州の老舗企業に学ぶところは大きいかもしれません。

4.自前主義から協業へ ~社外に広いネットワークを

最後に、個々人のスキルが上がり、アイデンティティもしっかりすればよいかと言えば、それだけではまだ足りません。個々人がより創造的に価値創出をするためには、今まで以上にオープンなネットワークを作り上げ、新しい知見をどんどん取り入れる機会を提供する必要があります。人材育成という観点からも、異業種とのネットワークであったり、新しいコミュニティとの関わりについてサポートすることが必要になるでしょう。

ではなぜ広いネットワークやコミュニティが必要なのでしょうか。

デジタル化が進み、多くのプラットフォームが出てくる中、全ての機能を自前で抱えることはどんな企業であっても難しくなっています。既にサーバーはクラウドにして、管理システムは他社のERPを使い、間接業務は外注しているという企業もあるでしょう。

同じように、今後は企画や研究開発も含め、いかに自前主義を脱してオープンなネットワークを築けるかが競争力を高める秘訣になっていきます。今までは自社の中で働き、その中のネットワークに閉じていても幸せに働けたかもしれませんが、今後は自ら様々なコミュニティに出入りし、新しいアイデアをインプットし、その中で知り合ったパートナーと協業していく能力が必要になるということです。それは、個人が価値創造の源泉になっているから、そしてデジタル社会のなかでは、会社のそれぞれの機能については自社よりも上手くできる企業が存在し、簡単にそのノウハウを使うことができるからです。

Amazonは自社の在庫情報やECシステムを他社にも公開し、利用させることで一気に成長しました。今までの競合が競合ではなく、パートナーになっていく時代、それがWithコロナの世界でもあります。デジタル化が進めば進むほどその傾向は高まっていくでしょう。

5.最後に

今回、Withコロナの世界における人材育成というテーマで、大きく変わっていく点を3点挙げました。

従来、日本の企業は人材育成というとOJTという名のもとに現場に丸投げするという傾向が強く見られ、終身雇用のなかで社員側も真剣なスキルアップやキャリア形成ということを考えない様子も見られました。しかし、これからの世界、そのままで生き残ることはできません。

Withコロナの世界でいかに早く変化に対応できるか、「企業は人なり」という会社であればこそ、今すぐに手を打っていく必要があるでしょう。

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