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2021/09/27

企業でのコーチングが難しい理由と、今だからこそやるべき理由

1.はじめに

近年、企業においても「コーチング」が改めてブームとなっています。

皆さんの会社でも「ティーチング」ではなく「コーチング」で、と言われたことやそういった研修を受けたことはないでしょうか。
変化が激しいこの時代、成果が出る方法を教える(=ティーチ)ことができない以上、個人の才能や天才性、好きの力そのものに目を向けようとしている、それが今再燃しているコーチング・ブームの背景です。

ただ、コーチングといってもピンと来ない方も多いでしょう。
今回は企業におけるコーチング(コーポレート・コーチング)について考えていくことにします。

2.コーチングの意味合いと重要ポイント

コーチとは、もともと人を目的地に連れていくことを意味しています。
コーチングの目的はクライアントの目標達成、そのためにあらゆるサポートを惜しまない、これに尽きると言っても過言ではありません。

また、往々にして私たちは自分自身の可能性を過小評価しがちです。自分の過去の経験や知識に照らしたとき、あまりに遠い目標というものは設定しづらいものです。それに対してコーチはその人の可能性を信じ、もっと豊かな未来、大きな夢を見出します。現状に小さくまとまることなく、こういう可能性もある、こんな広げ方もできる、と依頼人の可能性を大きく広げ、ゴールを大きくしていくこと、これもまたコーチの重要な役割になります。その意味でコーチは、依頼人よりも経験豊かで視野も広く、そしてそのゴールへの行き方を知っている人間でなければいけません。

従って、コーチという仕事は(その名前の気軽さとは裏腹に)高度な専門職と考えるべきです。カウンセラーやコンサルタントという職種に専門性が必要なように、コーチにも相手のゴールを聞き出し、相手の自己肯定感を高め、より高い目標設定を促し、そしてそのサポートをするという専門的スキルが必要だということです。「コーチ」という呼び名からか、この難しさや専門性への評価があまり認識されていないのは残念なことです。

コーチングとは、もしかしたら本人すら気付いていないかもしれない大きな目標(ゴール)を見出し、設定し、そして実現のサポートをすることです。だからこそ世の中の経営者の多くはエグゼクティブ・コーチをつけ、自分自身の考えを整理するとともにより遠くのゴールを見つけようとしているのです。

3.コーポレート・コーチングは難しい

そういった個人の才能を最大限に引き出して自発的に動き出させるようなコーチングを企業に取り入れようという動きは多くあります。上司は部下のコーチとして、ティーチングではなく話を聞くことで部下のやる気とモチベーション、そして新しい発想を引き出しなさいと言われています。

しかし、実際のところ、これはかなり難しいものです。

もちろん技術面でコーチング・スキルが未熟であるという面もあるでしょう。
コーチングを「組織の目標達成のため」であると勘違いし、面談が単なるPDCAのチェックになってしまっている人もいるでしょう。

ただ、根本的な難しさは別のところにあります。
それは、本来「コーチ-クライアントの関係」は上下関係ではなく、対等な関係だということです。

本稿でも最初からコーチングは「クライアントの目的達成」に向けた技術であるということを強調してきました。コーチングには、まずクライアントが望んでコーチングを受けるという前提があります。クライアントが自らを変えたい、より人生の可能性を拓きたいと思って、コーチの門を叩くのです。そこにはすでに変化の兆しがあり、自分で選んだコーチに対する信頼感も持っています。クライアントはコーチを選べますし、コーチもクライアントを選べるのです。そういった前提条件が満たされて、初めてコーチングが機能します。

そして、対等な関係である証拠に、コーチ-クライアント関係は金銭の授受を伴った契約関係にあります。市場原理の中で、対価を払ってコーチを雇い、コーチも対価をもらってクライアントの自己実現をサポートします。金銭を伴うからこそプロ意識が働き、コーチが自分より若くても、自分の専門分野について詳しくなくても、まさに「コーチングの専門家」として信頼するということです。

この前提を上司-部下は共有していません。たまたまその時にいた上司が突然望んでもいない部下にコーチングすることになりますし、そもそも普段は上下関係にある上司-部下が、そのときだけ急に対等だね、ということにもなりません。

そもそも日本企業の場合は、上司部下の関係はフラットな契約関係というよりも、むしろ家族関係に近いウェットなものがあります。第三者に指摘されても気にならないのに、家族に指摘されると受け入れられないということは多くあるでしょう。社外の若手にはビジネスパートナーとして丁寧にふるまえるのに、社内の若手には妙に横柄に振舞ってしまうという上司は多いのではないでしょうか。上司と部下の関係性はコーチがクライアントに求める関係性と全く違うがゆえに、そもそも一般的な意味でのコーチングが成立しないということです。

従って、社内におけるコーチングは非常に難しいものがあります。コーチングは専門スキルであり、お互いが対等な関係で自発的に結びつかなければ機能しないのです。

4.では、コーポレート・コーチングはどうあるべきか?

それではコーチングは企業内において役に立たないかというとそういうわけではありません。個人対個人のコーチングは上述の通り難しいものがありますが、コーチングのエッセンスを上手く応用し、組織全体にコーチングの効果を及ぼすことはできるのです。

コーチングの肝は、相手の目標達成のサポート、そしてまだ見ぬゴールの設定でした。それにより相手の世界を広げ、自発的に自己実現へと動き出すサポートをしていきます。

これを企業内に応用すると、コーチたる上司の仕事は何でしょうか。

一言で言えば、それは「ビジョン構築」になります。

チームのビジョンを作り上げ、このチームにはこういう役割がある、こういう目標に向かって頑張っていこう、というチームの定義づけを行うということです。

ここでのポイントは、組織として上から落とす義務的な目標ではなく、チームメンバーそれぞれが自分自身の目標として追いかけられるような、ワクワクするビジョンを構築することです。そのことによって、チームビジョンが自分自身の目標として認識され、自発的にアイデアを出して追いかけていくコーチングのサイクルが回り始めます。


通常、企業におけるビジョンは公共性があるはずですし、どの人にも「そんな未来が来るといいな」とワクワクするものにできるはずです。そうすることで、例えばこのコロナ禍においてもこういう風に社会を良くしていくことがこのチームにはできる、その中でも君の役割は大きいものがある、君ならきっと出来るし全力でサポートするからやってくれないか、といった語り掛けができるはずです。ここでその本人も「そういう役割なら是非参加したいな」と思ってくれれば、まさに個人のゴールと組織のゴールが一緒になっていくことになります。

ここでの上司はあくまでメンバーがビジョンを達成するためのサポート役です。チーム全体のモチベーションを上げ、前向きな雰囲気を作り、個々人の意見を最大限聞きながら大きなチームの目標に向けて課員を配置していきます。個々人の役割をしっかり定義し、心理的安全性を担保し、大きなゴール達成のために多くの意見が出るような環境を作るということです。個人が、自分の目標としてチーム・ビジョンを追いかけ、その実現に全力を注ぐことに幸せを感じるような、そういう場づくりをしていくということです。

このためには日常的な部下とのコミュニケーションも欠かせません。部下の価値観や適性、個人としての夢や目標を把握しておくことも重要でしょう。そのうえでチームとしてワクワクするビジョンを作り、どんな状況でも前向きに頑張ることができるチームにしていくこということです。

コーポレート・コーチングの肝は「ビジョン構築」にあり、そのビジョンの達成に向けて部下が積極的に関与し、アイデアを発信していくような雰囲気を作っていくことにあります。改めて皆さんのコーチングの理解と比べてみてほしいと思います。

5.最後に ~コロナを経た新しい世界だからこそ

コロナ禍でチームの一体感がなくなってきた、という会社も多いと思います。
今までよりも一層、直接の指導が難しく、管理することも難しくなったといえるでしょう。
そんな中、このコーチング的なアプローチは益々重要になっています。
離れていても、人は自分の役割を認識し、チームに貢献したいと思うものです。その役割がワクワクするゴールに向けたものであれば、なおさら自発的に取り組んでいくでしょう。コーチングの主役はあくまでクライアントであり、コーポレート・コーチングでは部下だということになります。彼ら彼女らの天才性をいかに発揮させるか、是非コーチングの力を活かしてほしいと思います。

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