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2021/06/01

デジタル時代に必要なビジネス構想力 ~単なるオンライン化では生き残れない!

1.はじめに

コロナ禍では多くの変化がありましたが、その一つはデジタル化の加速でしょう。
あれだけ「わが社では無理」と言われてきたテレワークもあっという間に広がり、いざ使ってみると(多くの問題はありつつも)メリットも大きかったという実感を誰しも持つのではないでしょうか。

そんなデジタル化が進んできた昨今ですが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉も同じくバズワードとして世間をにぎわしています。

「DXで何かできないか」

という経営陣の要望は多いわけですが、一方でDXの成功例といわれる事例はそれほど多くなく、多くの企業がどう進めていけばよいのか悩んでいるのが実態です。

では、なぜDXは難しいのか、今回はデジタル化時代に必要なビジネスを構想する力について考えていきましょう。

2.単なるリアルの置き換え(デジタル化)では価値は減損する

コロナ禍では多くのサービスがデジタルで提供されるようになりましたが、その過程で多くの問題も起きました。興味深い事例は米国の大学で起こった授業料減額要求です。

米国の大学ではコロナウイルスのパンデミックに伴って多くが授業のオンライン化を実施しました。それ自体はやむを得ないのですが、学生たちにとっては深刻な問題を孕んでいます。米国の有名私立大学であれば、年間の授業料が500万円以上になるのも普通ですが、授業がすべてオンライン化され、キャンパスにも行けず、図書館も使えず、友人とカフェでコーヒーを飲みながら議論もできない、そんな大学生活に500万円以上の価値があるのでしょうか。実際、フルリモートで受けることができるオンラインの大学であれば遥かに安い金額で同等の授業内容を受けることが出来ます。こうした中、一部の学生は大学に対して授業料の減額を要求しています。

これは端的に、リアルを単純にオンライン化するだけでは、その価値は下がってしまうということを表しています。私たちはリアルにより価値を感じるのであって、ビデオ講義と変わらないオンライン授業に500万円の価値は感じないのです。

同じようなことは企業でも起こっているでしょう。ミーティングや営業活動をオンラインで行うことは可能です。簡単で便利になりましたが、一方でどこでもいつでも対応できるので、ある意味価値が下がっていっていると感じることはないでしょうか。

デジタルは限界費用ゼロで複製可能な世界です。ワンクリックでコピー可能で、一度データ化してしまえば去年の内容も今見ることが出来ます。オンライン営業にしても、商品内容を伝えるだけであればビデオに撮って見たいときに見られる方が顧客にとってはよいかもしれません。そしてその映像は他の顧客への営業にも使えるかもしれません。

3.事業の内容も範囲もデジタルで「再構築」する必要が出てくる
(1)事業内容をがゼロベースで再構築される

小学校がリモート化したとき、多くの学校の先生が自分で動画を撮って教材を作り、30人程度の生徒に配信をしていました。しかし、デジタルの世界で配信するとき、個々の教師が個別に動画撮影する必要が本当にあるのでしょうか。


東進ハイスクールは以前から一流の人気講師がビデオを撮影し、それを全国の生徒が視聴して学ぶというモデルで業績を伸ばしてきました。レベル別に必要とはいえ、単純に学習内容を教えるだけであれば、全国にトップの教師が一人いれば十分だというのはこのモデルが証明しています。知識の伝授であれば、最高の先生が最高の授業を行い、それを全国の生徒が好きな時間に見ることで十分であり、多くの現場の先生は個別の生徒のフォローに回ることが出来るはずです。デジタル化によって教育本来の目的をどう達成するのか、そのやり方が根本的に再構成され、それに伴って教師はどうあるべきかが大きく変わる可能性があるのです。

企業においても同じことが言えます。印鑑をデジタル印鑑にすることがデジタル化ではなく、営業をZoom営業にすることがデジタル化ではありません。印鑑の役割が「意思確認」や「正しい承認フローの確認」なのであれば、それをデジタルの世界でいかに効率よく実現するかという問いかけになり、そこではゼロベースで仕組みを再構築する必要があるでしょう。営業の本質が顧客への価値伝達なのであれば、どのようにデジタルの世界で顧客に効率よく価値を伝えられるのかをゼロベースで議論しなくてはいけません。

このゼロベースでビジネスを再構築すること、これがDXの難しさです。当然ながら従来のやり方とは違った方法になるでしょうし、多くの場合は効率的になって雇用も失われるでしょう。発想するのも難しければ、実行しようとしても既存の社員から大きな抵抗にあう、それがDXが実際に広がらない最大の理由なのです。

(2)企業の範囲も曖昧になり、コアがない会社は淘汰される

デジタル時代に合わせて事業を再構築しようと決意したとしても、次の試練が待ち受けています。それは「デジタル社会は強者総取りの世界(Winner-take-all)」ということです。要するに、デジタルの世界では一強化が進み、そのトップランナーになれなければ勝ち残れないのです。

これはGoogleやAmazon、Facebookなどを見れば明らかです。サイバーの世界では距離という概念がありませんから、消費者はどのサービスも等距離で利用することが出来ます。必然的に最も優れたサービスにアクセスが集中し、アクセスが集中するからこそその企業はさらにサービスを改善して周りを突き放していくのです(ネットワーク外部性)。検索エンジンも以前はGooやYahoo!、niftyやinfoseekなど色々なものがありましたが、今はGoogleの一強です。SNSもmixiは淘汰されてFacebookが圧倒的でしょう。これらのサービスはそこで集めたデータを用いて更に便利になり、最適化され、その地位を盤石なものにしていきます。

もしデータが集まるほどの精度が上がり効率化が進むのであれば、最もデータを集めるサービスがどんどんと最高のサービスになっていくはずです。極論すればビジネスの機能はそれぞれが究極的に1社に集約され、その他の企業はそこにその機能を委託する方が効率的に経営できるということになります。ということは、自社はコアのビジネス領域を強化し、そこで同様のプラットフォーマーになっていくしかありません。そういう競争力のあるコアがない会社は淘汰されるしかなくなっていくでしょう。かくもデジタルの世界は残酷です。

まとめると、デジタル化が進む世界においては、いかに自社の事業をデジタルを前提として再構築できるか、そして自社のコア事業に集中して勝ち抜くことが出来るか(多くの場合プラットフォーマーの地位を築けるか)ということになっていくということです。それには単なるデジタル化というよりは、ビジネス全体を描く構想力と、大きな意思決定力が求められるでしょう。だからこそ難しいのです。

4.So what? ~ではどうすればいいのか?

まずはそういったデジタル社会における競争のルールを正しく認識することが大切です。

ビジネスをデジタル前提でゼロベースで作り直すこと、もし今自社のサービスを一から作るとしたらどんな形になるのかを想像すること。そして、バリューチェーンでコアになる機能には徹底的に投資し、そうでない部分は自社よりも上手くやれる企業と上手く提携していくこと。このような思考回路をとることになるでしょう。

いずれにせよ、単なるOA化(オフィス・オートメーション:電子化・自動化)ではなく、DXのレベルで事業を加速させていこうとすれば、ビジネスの仕組みの中に「データが集まれば集まるほど価値の高いサービスが提供できる」というネットワーク外部性を組み込んでおかなければいけません。今の時代にいわゆるプラットフォーマーが活躍しているのは理由があるのです。

したがって、これからはますます自社がどの事業に集中するのか、市場選択(事業定義)が重要になっていくでしょう。市場の切り取り方によってそこで勝てるかどうかが決まってきます。総合ECでAmazonに勝てなくとも、アパレルという市場だけに特化すればゾゾタウンが勝つことが出来るのです。

5.さいごに ~揺り戻しはあれども・・・

最近ではGoogleやFacebookなど、いわゆる巨大プラットフォーマーへの規制が厳しくなり、Appleも個人情報を保護する方向で動くなど、デジタル化の力学を緩やかにしようという動きは発生しています。しかし原理的な部分は何も変わっておらず、デジタル社会での価値の生み出し方に変化はありません。この「デジタル化の力学」を理解しているかどうかで今後のビジネスのやり方も大きく変わるでしょうし、成長可能性も全く違うはずです。

揺り戻しはあれど、それは今までの環境を守ってくれるわけではありません。デジタル化が加速する中、自社が勝ち抜く戦略を描いていきましょう!

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