コラム

インバスケット思考とは?訓練により職場の生産性と管理職の能力を向上

「時間がないからできない」「頑張ってもこなせない」「指示がないとできない」などが口癖になってはいませんか? そんな悩みを持つ企業人に注目されているのが「インバスケット思考」です。インバスケット思考は、日々タスクに追われている人や迅速な決断が求められる管理職など、企業活動に関わるすべての人に有益だとされています。

インバスケット思考とは

インバスケット思考は、多数のタスクに優先順位をつけ、限られた時間内で処理していく思考法です。もともとは1950年代にアメリカ空軍の教育訓練に使われていたトレーニング手法ですが、ビジネスの現場での人材育成や人材選抜にも有効とされ、現在では多くの企業で活用されています。

管理職は、日々のタスクに加え突発的な業務に追われることがあります。このように積み重なった業務は、インバスケット思考を身につけることで的確に優先順位をつけて作業を遂行できるようになります。また、新入社員は指示がないと動けないケースがありますが、インバスケット思考のトレーニングをすることで目の前の仕事の目的を理解し、行うべき作業を想像できるようになるのです。さらに、管理職はトレーニングでの社員それぞれの動きから、思考の癖や得意分野を把握することができます。

このように、インバスケット思考を身につけるトレーニングを行うことで、「成果を意識した優先順位によるスケジューリング」「問題解決能力」「先見性」「判断力」「マネジメント能力」を身につけることができます。

インバスケット思考はビジネスパーソンの能力向上だけでなく、企業の生産性を上げるためにも有益な思考法だといえるのです。

インバスケット思考トレーニングの具体例

インバスケット思考のトレーニングでは、架空の人物や役職になり切って「部下からの報告」「相談」「連絡文書」「上司からの指示文書」「他部門からの依頼」「本社からの通達文書」「顧客からのクレーム」といった大量の課題を制限時間内に処理していきます。

以下で具体的なインバスケット思考の演習問題を見てみましょう。

ミニインバスケット問題「インバス!メールマガジン133号 優先順位設定」|インバスケット研究所より

あなたが出張から戻ると、いくつかの案件がたまっています。下記の案件の処理順番を設定してください。

  1. 取引先からのメール
    昨日、納品されるはずの商品が納品されていないと取引先から連絡
  2. 上司からメール
    出張費精算の計算ミスの指摘。大至急、訂正の上、提出の事
  3. 上司からのメール
    他営業所でパソコンがウイルスに感染しデータが流出した事故があったという情報
  4. 総務部からのメール
    来月の社内旅行の参加申し込み(昨日で期限切れ)

あなたが処理しなければならないと考える優先度1位と2位の組み合わせを選んでください。

選択肢1: 1位B 2位A
選択肢2: 1位B 2位D
選択肢3: 1位A 2位D
選択肢4: 1位A 2位C

インバスケット思考の演習問題に正解はありません。それは、回答に至るまでの思考そのものがトレーニングだからです。また、回答をチームで共有し話し合うことで、さらなるトレーニングとなります。

インバスケット思考で得られることと企業での取り組み方

インバスケット思考の演習問題を解くためには、これまでの経験や知識を総動員しなければなりません。これは、問題分析力、要因分析力、総合判断力、発想力や創造力の向上に有効です。

演習後に自身の回答を振り返ることで、日ごろの行動や思考パターンをチェックできます。さらに、ほかの人と回答を共有し、自分と他者の視点を比較することで、状況判断の基準の違いも確認できるのです。そして、問題を解決に導くための思考ができるようになるでしょう。

インバスケット思考の演習は、管理職研修においても有効です。演習後に結果を見直すことによって課題と解決策が可視化され、論理的な判断力が身につきます。突発的なトラブルや業務にも落ち着いた対応が可能となり、部下にも的確な指示を出せるようになるでしょう。

すでに、新人研修や営業研修へインバスケット思考の演習を取り入れている企業もあります。演習を繰り返すことで、業務管理能力(計画策定力、統制力)、自己管理力(持続力、自律力、決断力)が身につくからです。その結果、社員はよりハードルの高い仕事に挑戦できるようになり、成功体験をもとに新たな実践目標の設定が可能になります。インバスケット思考の習得によって、社員の生産性だけでなくモチベーションも向上し、それが部署全体、ひいては企業全体の成長へとつながっていくのです。

働き方改革では、労働時間ではなく成果を評価するという動きがあります。限られた時間のなかでタスクに最適な優先順位をつけて処理する能力は、今後ますます求められるようになるでしょう。