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人材育成の企画・立案

第11回 人材育成における上司の関わり方と『1on1ミーティング』

第7回~第9回では、off-JTのデザインについて、第10回ではOJTについて考察していきました。
第11回では、off-JTとOJTいずれにも関与してくる上司の関与について、特に昨今注目されている『1on1ミーティング』を題材にご紹介を進めていきます。

人材育成の世界で、『研修転移』という言葉があります。『研修転移』とは、研修(off-JT)で学習したことを実際の仕事現場で活かし、成果をあげることを指します。

「どうすれば、研修で実践したことが研修会場内だけに留まらず実践してもらえるか?」
というのは、人材育成企画担当者の大きな課題の一つでしょう。

この『研修転移』についての有名な考え方に『転移マトリックス』というものがあります。
縦軸に、研修に関する登場人物として、「上司」「講師」「受講者」を置き、横軸に、研修前・研修中・研修後という時間の流れを置くと、3×3のマトリックスができます。

Broad&Newstromはこの9つの枠について、人材育成実践者にインタビューを元に調査をし、整理をしました。

図で、研修転移において影響度が高いものを赤枠で囲んでいますが、研修前後においては、講師や受講者以上に上司の影響が強いことが読み取れます。
更にこのマトリックスから、研修転移において、影響が強い上司の働きかけは研修前も研修後も十分ではないことが分かります。(研修前、研修後の上司の使用度欄参照)

このことから、研修(off-JT)の効果を最大化する上での大きなポイントは、上司の関与ということが言えるかと思います。

一方で、OJTに関しても、『OJTがうまくいかない理由』において挙げられている「育成の重要性が浸透していない」「指導する人が評価されない」「OJTを支援する体制・雰囲気不足」「上司が指導する人を支援しない」等、理由の大半が、上司の関与についての項目とも言えそうです。

これらのことから、いかに現場の上司を人材育成に関与させるかは、人材育成企画担当者にとって非常に大きな課題です。
その解決策の一つとして、『1on1ミーティング』(略して『1on1』と言うこともあります)が、ここ数年非常に注目されています。

※もちろん組織論で見た際には上司だけでの問題ではなく、育成浸透の組織文化・ツール・評価指標の見直し・風土醸成といった、企業全体での取組み=企業戦略の1つである人材戦略として捉え、組織&中長期的な取り組みも必要です。そういった「企業のそもそも論」を考える事も解決策の一つです。ただここでは、すぐに実践して頂きやすい「上司」に焦点を絞って、お伝えしていきます。

『1on1ミーティング』とは?

『1on1ミーティング』とは、上司と部下が定期的に1対1で行う部下の育成を主目的とした個人面談の場です。
上司と部下が行う会話は、他にも業務指導における会話や評価面談における会話等がありますが、『1on1ミーティング』とは、それらの会話と目的、内容、頻度が異なります。『1on1ミーティング』の主たる目的は、部下の育成にあり、そのために、『仕組みとして』定期的に30分程度の面談の時間を持ちます。

ここで重要なのは、『仕組みとして』という点です。
部下の育成についてのコミュニケーションは、上司にとって、非常に重要な業務であることは言うまでもありません。
しかしながら、『転移マトリックス』が示している通り、多くの上司は育成についてのコミュニケーションを十分にできていません。

その理由は、部下の育成についてのコミュニケーションは、『重要ではあるが緊急ではない内容』だからです。

『1on1ミーティング』を仕組みとして導入することの大きな狙いは、重要ではあるが、緊急ではない部下の育成についてのコミュニケーションを意図的に促進させることにあるのです。

『1on1ミーティング』で得られるもの

『1on1ミーティング』が仕組みとして定着し、機能しだすと、何が得られるのでしょうか。
実際に、アメリカのシリコンバレーでは、日本に先立って『1on1ミーティング』を取り入れた企業が多く、それらの企業では、部下育成という当初の目的に加え、以下のものが得られています。

  • 上司と部下の間に揺るぎのない信頼関係が生まれる
  • 心身が不調で休職になるところだった部下が、早期の対策で生き生き働き出す
  • やる気のなかった部下が自発的に働くようになる
  • 評価査定の後、不機嫌になる部下がいなくなる
  • 仕事に飽きてきた優秀な上位2割が、再び情熱を持って業務にチャレンジを始める
  • 「後手の対応」から「先手の対策」へと人材マネジメントが代わる
  • 部下からの「ちょっといいですか?」のミーティング時間が本当に「ちょっと」になる
  • 「ビックリ退職」がなくなる

出典:『シリコンバレー式 最強の育て方』 世古詞一 著)

育成を目的とした活動なので、目に見える形で直ぐに効果がでるというより、じわりじわりと効果がでてくるものが多いように思います。

一方で、著者が導入を支援した企業(コールセンター運営)では、『1on1ミーティング』を導入後、離職率が半減するという分かりやすい効果がでる事例もあります。

『1on1ミーティング』の進め方と上司に求められるスキル

『1on1ミーティング』は、1回30分程度を目安に行われます。便宜上、オープニング・ボディ・エンディングという3部で構成して、各ポイントを解説いたします。

オープニング

『1on1ミーティング』の冒頭では、プライベート面の近況など簡単なアイスブレイクに加え、心身の健康確認、前回の『1on1ミーティング』で話し合ったことや約束事項の進捗確認を行います。
ここでの何気ない会話から、部下の心身面での変化を捉えておくことは部下育成の観点でも非常に重要です。

また、多くの場合、『1on1ミーティング』終了時に、今後1週間の目標やアクションを設定しますが、その進捗確認を行うことも忘れてはなりません。ちょっとした進捗であったとしても、しっかりと承認を行います。

ボディ

『1on1ミーティング』では、部下育成という大きな目的はありますが、毎回の面談で何を話すかが厳密に決まっているものではありません。
その時々の、上司・部下の状況に応じて面談で話すテーマを設定して話します。代表的なテーマとしては、『部下との関係を深める対話』、『部下の成長を促進させる対話』、『部下の充実感を高める対話』を挙げています。

『部下との関係を深める対話』では、お互いの仕事に対する考えや思いを話し合ったり、部下の今後のキャリアについての話、或いはプライベートに関する話も含まれます。
『部下の成長を促進させる対話』では、1週間の仕事を振り返り、部下の内省を支援します。何ができるようになり、何が今後の成長課題かを話し合います。
『部下の充実感を高める対話』では、特にモチベーションが下がっている部下を対象に、仕事の意味づけやモチベーションに関する対話を行います。

エンディング

面談終了時には、今回の面談内容を振り返り、次回までの目標やアクションを確認しあいます。この内容を忘れないように、記録に残しておくことも大事なポイントです。

求められるスキル

『1on1ミーティング』は部下のための時間であり、基本的には部下の話を引き出すことが重要となります。求められるスキルとしては、『傾聴・共感』を中心としたコーチングのスキルが有用になるでしょう。

『1on1ミーティング』で育成を加速させる

「せっかくoff-JT(研修)を実施したが、効果がでていない。」
「OJTのメンター制度を取り入れたが、うまく機能していない。」

こららの課題への対応は、間違いなく現場の上司の関与が必要になります。
どのように上司を関与させるべきかの一つとして、『1on1ミーティング』を検討することも一考に値するにではないでしょうか。

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